
本シリーズでは様々なシーンで利用される干渉計について、その原理や応用例などを解説する。今回は前回に引き続き、マイケルソン干渉計について紹介する。
本シリーズの記事はこちらから:
さまざまな干渉計:干渉計の分類
さまざまな干渉計:フィゾー干渉計(1)
さまざまな干渉計:フィゾー干渉計(2)
さまざまな干渉計:フィゾー干渉計(3)
さまざまな干渉計:トワイマン・グリーン干渉計(1)
さまざまな干渉計:トワイマン・グリーン干渉計(2)
さまざまな干渉計:トワイマン・グリーン干渉計(3)
さまざまな干渉計:トワイマン・グリーン干渉計(4)
さまざまな干渉計:マッハ・ツェンダー干渉計
さまざまな干渉計:マイケルソン干渉計(1)
さまざまな干渉計:マイケルソン干渉計(2)
本シリーズでは干渉計の分類の記事内の図1のように干渉計を分類している。今回は「マイケルソン干渉計」の第3回として、中核にその原理が用いられている重力波望遠鏡について紹介する。
■重力波望遠鏡とマイケルソン干渉計
2015年、アメリカの重力波望遠鏡LIGOが世界で初めて重力波の直接検出に成功した。重力波とは、アインシュタインの一般相対性理論が予言する「時空の歪み」が波となって光速で伝わる現象である。これは非常に重い天体が激しく運動・合体する際に発生する。LIGO がとらえた初の重力波は、約13億光年離れた場所でブラックホール連星が合体した際に生じたものであった。重力波の存在は1916年に予言されていたが、直接検出までに約100年もの歳月を要した。その理由は、発生源が極めて遠く、地球に届く時空の歪みがごくわずかなため、検出が非常に困難であったためである。
この重力波を検出するための装置が重力波望遠鏡であり、その本質は”巨大なマイケルソン干渉計”である。マイケルソン干渉計は、共通光源であるレーザー光をビームスプリッタで二分し、直交する二方向に反射させて再び合波させることで、光路長のわずかな違いを干渉縞として検出する装置である(図1)。重力波が地球を通過すると空間そのものが伸縮し、一方の光路が他方よりわずかに長く、あるいは短くなる。その違いが干渉縞の明暗変化として現れるため、それを捉えることが重力波望遠鏡の目的である。干渉計の基線長(アーム長)を長くすれば検出感度は向上するため、装置は数百メートルから数キロメートルに及ぶ。

図1:重力波望遠鏡の原理
代表的な重力波望遠鏡を表1に示す。日本では、世界の大型装置に先駆けて1999年にTAMA300による観測を開始し、当時の世界最高感度や長期観測を達成した。キロメートル級の大型装置は2000年代初頭から運転を開始し、装置のアップグレードを重ねながら観測を続けている。しかし単にアーム長を伸ばすだけでは重力波をとらえることはできない。地上には重力波信号に匹敵するほど微小なノイズが数多く存在し、地震や交通振動、温度変化、さらには鏡内部の熱振動(熱雑音)までが観測を妨げる。このため重力波望遠鏡では、極めて高度な低ノイズ化技術が導入されている。鏡は多段の防振装置に吊り下げられ、空気の乱れを避けるため光は真空管内を通る。日本のKAGRAでは、鏡を20Kまで冷却し、装置を地下深くに建設することで熱雑音と地面振動を大幅に低減している。

表1:代表的な重力波望遠鏡
重力波の検出は、一般相対性理論が予言した時空の歪みの存在を裏付ける歴史的快挙である。またさまざまな干渉計:マイケルソン干渉計(2)で紹介したマイケルソン・モーリーの実験は、特殊相対性理論の根幹である光速不変の原理の実験的根拠となる重要な成果であった。これらを踏まえると、マイケルソン干渉計は特殊・一般の両相対性理論の検証に深く貢献した、きわめて重要な干渉計であるといえよう。
次回はファブリ・ペロー干渉計について紹介する。
趣味は天文と写真と車。大学では天文サークルに所属し、暗い空を求めて日本中を飛び回っていた。 天文学を極めるために大学院に進学、在籍中は中間赤外線分光器の開発に従事。 カメラやレンズに関する記事を主に担当。