Aπραξία

光学測定器

結晶構造と対称性(1)

2026.4.23

結晶構造と対称性(1)

光学機器に利用されるレンズや窓材には各種光学材料が用いられる。これらの材料は、原子配列に長距離の規則性がないア非晶質(モルファスとも呼ばれる、ガラスなど)と、原子や分子が規則正しく周期的に配列した結晶に大別される。結晶における原子の配置構造を結晶構造と呼び、結晶構造の違いにより物性や光学特性に差が現れる。今回は結晶構造の種類についてまとめたい。

結晶とは、原子や分子が空間的に規則正しく、周期的に規則正しく配列した固体のことである。「周期的」というのがポイントで、ある配列パターンが三次元的に繰り返されている。対照的に、ガラスは「非晶質(アモルファス)」と呼ばれ、原子配列に(広範囲にわたる一定の)規則性がない。ある範囲では似たような構造が見られるが、まったく異なる場所を見ると規則性が崩れているというイメージである。今回は結晶全体で原子配列の向きが揃っている単結晶を例に結晶構造について考えよう。余談だが、単結晶に対し「多結晶」もあり、こちらは小さな単結晶(結晶粒)が多数集まったもので、それらの向きはバラバラである。複屈折や結晶方位といった議論が意味を持つのは単結晶の場合である。

 

結晶の周期的な配列を記述するために、結晶軸と単位格子という概念を導入しよう。単位格子とは、結晶の繰り返しパターンの最小単位である。この単位格子を三次元的に積み重ねていくと、結晶全体の構造が再現できる。単位格子の形を定義するための3本の軸を設定する。これが結晶軸であり、慣例的にa軸、b軸、c軸と呼ばれる。各軸方向の単位格子の長さを格子定数(a, b, c)と呼び、軸同士のなす角度をα、β、γで表す(図1)。結晶軸の取り方は任意であるものの、国際結晶学連合(IUCr)が発行するInternational Tables for Crystallographyによると「対称性」を反映するように以下のように取るのが標準となっているようである。

 

– 正方晶・六方晶では、c軸を最も高次の回転対称軸(4回軸または6回軸)に取る
– 単斜晶では、b軸を2回対称軸に取り、90°でない角をβとする
– 斜方晶・三斜晶では対称性による区別がないため、軸の長さの順序で決める

 

図1:単位格子と結晶軸(a,b,c)、軸間角度(α,β,γ)の定義


 

格子定数(a, b, c)と軸間角度(α, β, γ)の関係によって、結晶は7つの結晶系に分類される(図2)。この分類は結晶の対称性を反映している。立方晶系が最も対称性が高く、3つの軸がすべて等価で、どの方向から見ても「同じ」に見える。正方晶系や六方晶系では、c軸だけが他と異なる。正方晶系は縦に伸びた直方体、六方晶系は六角柱のようなイメージである。三斜晶系は最も対称性が低く、3つの軸がすべて異なり、角度もすべて90°ではない。赤外線の窓材は何が適切か?(1)ではいくつかの光学材料を紹介したが、CaF2やBaF2、KBr、ZnSeなど、ほとんどの材料は立方晶系である。サファイアは六方晶系、MgF2は正方晶系、石英は三方晶系である。

 

図2:7つの結晶系の単位格子


 

なぜ結晶の対称性が光学特性に影響するのだろう。光が物質中を進むとき、光の電場が物質中の電子を揺さぶり、分極が生じる。この分極の大きさが屈折率を決める。ここで重要なのは、電子の動きやすさが軸によって異なるかどうかである。立方晶系では、3つの軸がすべて等価なので、電子はどの方向にも同じように動く。したがって、光がどの方向から入射しても、どの偏光方向でも、屈折率は同じである。このような性質を光学的に等方性という。一方、六方晶系では、c軸方向とそれに垂直な方向で原子配列が異なる。そのため電子の動きやすさも方向によって異なり、偏光方向によって屈折率が異なる。これを光学的に異方性(または複屈折)という。次回は、この異方性を数式を使って定量的に記述する方法を解説する。

この記事の監修者プロフィール

小林 仁美

大学院在学時に携わった分光観測、低温実験とデータ解析をきっかけに、 実験・データ解析のサポートビジネスを創案。エストリスタを立ち上げ業務に従事する傍ら、 購買から経理までバックオフィス関連業務を一手に担う。 光学に関する素朴な疑問や分光・天文学に関する記事を主に担当。

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