Aπραξία

回折光学素子

CGHを理解する:CGHの回折効率(4)

2026.2.12

CGHを理解する:CGHの回折効率(4)

Computer Generated Hologram(計算機生成ホログラム、CGH)は、光の回折・干渉の効果を使い、任意の方向に光を飛ばす(波面を作る)ことが可能な光学素子である。CGHをはじめとする回折光学素子に入射した光エネルギーのうち、目的の出射光になる割合を「回折効率」 と呼ぶが、バイナリ振幅型CGHバイナリ位相型CGHに続き、今回はより回折効率が高いブレーズド型CGHについて紹介する。

ブレーズド(Blazed)型CGHはバイナリ振幅型・バイナリ位相型CGHに比べ、回折効率を更に高めて100%まで持って行くことも原理的には可能である。図1に透過型ブレーズド型CGHの断面図を示す。ブレーズド型CGHはCGHの断面が「のこぎり刃(鋸歯状)」になっており、特定の回折次数の回折効率を理論上100%にすることが出来る。

 

図1:透過型ブレーズド型CGH の断面図

 

これまではCGHの開口面での複素振幅を直接グラフで示してきたが、これは複素振幅が実数値しかとらないため可能であった。ブレーズド型CGHの場合は開口面での複素振幅が複素数値をとるため、直接グラフで示すのは難しい。そこで、代わりに図2でブレーズド型CGHの開口面での位相分布$\phi(x’)$を示す。位相分布$\phi(x’)$と複素振幅$A(x’)$は$A(x’)=e^{i\phi(x’)}$で関係付く。ブレーズド型 CGHは特定の回折次数に対して回折効率を最適化するため、CGHの位相分布に回折次数$l$が織り込まれている。

 

図2:ブレーズド型CGHの開口面での位相分布$\phi(x’)$と複素振幅$A(x’)$。この位相分布は回折次数$l$の回折効率を最大化する。

 

さて、このブレーズド型CGHの回折効率を計算してみよう。開口面での複素振幅$A(x’)$は次のように書ける:

$$A(x’) = e^{i \frac{2\pi l}{p}x’}$$

位相分布$\phi(x’)$は$p$毎に周期的な折返しがある構造だが、指数関数の周期性により複素振幅 $A(x’)$ は簡単に書ける。開口関数$A(x’)$の1周期を $-\frac{1}{2}p \sim \frac{1}{2}p$ と取り、これまで同様にこの範囲でフーリエ級数展開を計算すると、各係数$C_{m}$とその絶対値の2乗$|C_m|^2$は次のようになる。

$$C_m = \begin{cases} 1 & m = l \\ 0 & m \neq l \end{cases}$$
$$|C_m|^2 = \begin{cases} 1 & m = l \\ 0 & m \neq l \end{cases}$$

指数関数の直交性によりフーリエ級数展開は非常に簡単に計算できるので、是非自分でも計算してみてほしい。

 

このことから分かるように、ブレーズド型CGHは目的の次数の回折効率を100%にでき、その他の次数の回折効率を0%にすることが出来る理想的なCGHである。図1に示したようなブレーズド型CGHの「のこぎり刃(鋸歯状)」の形状を高精度に製作するのは容易でないが、2026年時点の加工技術ではブレーズド型CGHも(コスト次第では)あるが十分作成が可能となっている。一方で回折効率100%が必ずしも必要では無く、例えば90%以上などでも良いのであれば、次回に紹介する「多階調位相型CGH」がコスト的にはより適する可能性がある。

この記事の監修者プロフィール

別所 泰輝

大学院在学中は素粒子物理学を専攻。趣味の天体写真も物理理論に裏付けられた解析方法を行っており、 アマチュア天文家の間で蔓延している都市伝説は一切信じない。赤道儀マニアでアマチュア天文機器にやたら詳しい。 計算機ホログラム(CGH)や干渉計などの高度な物理計算を軽々とこなす。 光学・物理学に関連する原理や数学的理解に関する記事を担当。

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