
CCDやCMOSなどのデジタル検出器が広く使用される昨今、誰もが手軽に(といっても機材は高価だが)天体写真を撮影することができるようになっている。得られた画像に対して適切な「画像処理」をすることで、より美しい、あるいは科学的に正しい画像を得ることができる。画像はデジタルデータであるので、複数の画像を異なる方法で処理し、処理方法の違いで画像を比較する、なんてことも容易に可能になった。今回は天体写真の画像処理のうち、「ダーク減算」や「フラット補正」などの、いわゆる「下処理」(観測天文学の分野では一次処理、reductionという)の適切な手順ついて説明する。
図1は、天体画像処理のワークフローを簡単に示したものである。

図1:天体画像の処理手順
図1では「フレーム」を「1枚画像」の意味で用いており、「各ライトフレーム」は天体を撮影した1枚画像のことで、その他「バイアス」「ダーク」「ダークフラット」「フラット」などの画像の種類がある。冷却CCDではなくデジカメを用いる場合はバイアスフレームの撮影が出来ないことが多いので、その場合はバイアスフレームおよびマスターバイアスを用いた処理は省いて画像処理を行う。
それぞれのフレーム(1枚画像)に対し、コンポジット(=画像の足し合わせ、詳しくは天体画像を足し合わせる効果)や減算を施し、「マスター」と冠した単一画像を作成し、最後に各ライトフレームから各種マスター画像の減算や除算を行うことで、下処理の完了した各ライトフレームが完成する、という手順である。ただし1点注意が必要で、この図中の画像処理は全て「カラー現像前のRAWファイル」に対して行う。(マスターフラットでの除算はカラー現像後に行っても結果にはあまり影響しない場合があるが、それ以外の処理は必ず現像前のRAWファイルに対して行う。)
図中の処理が完了すると下処理後画像が得られるわけだが、この下処理後画像を「天体画像」にするには、この後さらに
デジカメ/カラーCCD:カラー現像 → 位置合わせしてコンポジット
モノクロCCD:各L、R、G、Bを位置合わせしてコンポジット → LRGB合成
という処理が必要になる。ここでは天体写真の画像処理の下処理の流れを大まかに説明したが、クオリティの高い天体写真を作るためには下処理の部分を適切に行うことが大事である。
大学院在学中は素粒子物理学を専攻。趣味の天体写真も物理理論に裏付けられた解析方法を行っており、 アマチュア天文家の間で蔓延している都市伝説は一切信じない。赤道儀マニアでアマチュア天文機器にやたら詳しい。 計算機ホログラム(CGH)や干渉計などの高度な物理計算を軽々とこなす。 光学・物理学に関連する原理や数学的理解に関する記事を担当。