天体写真における「ノイズ」の正体 その1

2023.10.4

天体写真における「ノイズ」の正体 その1

天体写真の出来映えは用いた機材や撮影の技術だけではなく、取得した画像に現れるノイズにも大きく左右される。適切な画像処理を行うためにも、まずは「ノイズ」を正しく理解しよう。

「ノイズ」の正体を知るには、まずは「誤差」について知る必要がある。大辞林によると、「誤差」とは「測定値・理論的推定値また近似計算によって得られた値と、真の値との差」とある、、、難しく書いてあるが、構えなくて大丈夫。要は「正しい天体のシグナル」と「実際に得られたシグナル」との”差”が「誤差」だということ。誤差はさらに「系統誤差」と「偶然誤差」に大別されるが、このうち「偶然誤差」が我々がふだん「ノイズ」と呼んでいるものに相当する。

 



 

ノイズじゃない方の系統誤差は「何回測定しても、毎回生じる同じ量のズレ」のこと。例えば測定機器の目盛りが間違っていて、毎回同じ量だけずれる誤差は系統誤差だ。

一方、偶然誤差は「何回観測しても再現性のないズレ」である。例えば測定機器が不安定で、毎回異なる値が表示される場合がこれに当たる。

 

簡単な例として、鉛筆の長さを物差しで繰り返し測る場合を考えよう。

 



 

もし物差しの目盛りがわずかにずれている・物差しがすり減って少し短くなっている等のことから生じる測定値のズレは「系統誤差」だ。これらの誤差には再現性がある。一方、物差しの当て方がある回のみわずかに斜めになってしまった・目盛りの十分の一まで読もうとしたが目分量なので読み値が毎回ばらつく等のことから生じる測定値のズレは「偶然誤差」である。筆者が不器用なだけかもしれないが、手で物差しを物にあてて測るたびに、物差しの当て方はどうしても微妙に変わってしまうだろう。これらの誤差には再現性がないのだ。

 

続いて写真の場合で考えてみよう。
デジタルカメラを三脚に固定し、同じ対象を何枚も撮影したとする。撮影したそれぞれのコマにおいて、同じピクセルのカウント値を比較してみると、コマ毎にほんの僅かだけバラツキがあるはずだ。このバラツキには残念ながら再現性はなく、これは「偶然誤差」、すなわちノイズである。一方、カメラのCCDやCMOSにはバッドピクセルと呼ばれる、毎回真っ黒・真っ白だったり、常に同じカウント値になっているピクセルが存在する。バッドピクセルのカウントは毎回ゼロ(真っ黒)もしくは最大値(真っ白)になり、再現性があるのでこちらは系統誤差に分類される

 

さて、これらノイズは実際の天体撮影にどう影響するのだろうか?天体(星や星雲)の真の明るさが下のような輝度分布だったとしよう。
ここでは簡単のため系統誤差はないものとして考える。

 

 

これに加えて、撮影時には偶然誤差(ノイズ)が発生する。このノイズが正しいの輝度分布に加わるため、カメラに記録される天体の明るさは以下のようなものになる。

 

ノイズには再現性がなく、また別のコマではノイズのパターンは異なるため、上図とは異なった画像が得られることに注意しよう。

なお、数学的にはこのノイズに相当するカウント値は「ポアソン分布」という確率モデルに従う。

次回は、ノイズの種類とそれぞれの特性を見ていこう。

この記事の監修者プロフィール

別所 泰輝

大学院在学中は素粒子物理学を専攻。趣味の天体写真も物理理論に裏付けられた解析方法を行っており、 アマチュア天文家の間で蔓延している都市伝説は一切信じない。赤道儀マニアでアマチュア天文機器にやたら詳しい。 計算機ホログラム(CGH)や干渉計などの高度な物理計算を軽々とこなす。 光学・物理学に関連する原理や数学的理解に関する記事を担当。

  • お電話でのお問い合わせ

    075-748-1491

    お急ぎの方はお電話にてご連絡ください。
    受付時間:平日10:00〜18:00

  • メールでのお問い合わせ

    MAIL FORM

    フォームよりお問い合わせください。

TOP