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SPIE Astronomical Telescopes + Instrumentation

2024.6.13

SPIE Astronomical Telescopes + Instrumentation

天文学に関わる望遠鏡・分析器(装置)の国際学会である「SPIE Astronomical Telescopes + Instrumentation」が、2024年6月16日から24日まで、日本のパシフィコ横浜にて開催される。

「天文学の学会」というと、一般的には天文学に関わるサイエンスがテーマになるものを思い浮かべる方も多いだろうが、この学会は天文学の研究に用いられる望遠鏡・装置に特化したものである。天文学者たちは昔から、自分たちが知りたい事象に対し、それらを解決するための手段が既存でない場合には、自分たちで新たに望遠鏡や観測装置を開発する。この「望遠鏡・装置開発」そのものが、実は天文学では非常に重要な1分野なのである。ちなみに日本天文学会でも、「望遠鏡・装置開発」のセッションは一番発表数が多いのではないか、、、私が関係する惑星科学の分野は、特に太陽系内の惑星科学にしぼると発表件数はだいたい両手で数え切れてしまい、開催日数も半日で終了するのに対し、こちらのセッションは3~4日の会期中、フルに開かれていたりする。

 

余談だが、個人的には「天文学者はなんでも屋」と思っている。その一因はこの「サイエンスから機器開発までやってのけてしまう」というところにある。ただし近年は望遠鏡や観測装置も大型化し、それらを用いて取り組むサイエンスも「プロジェクト化」していることから、携わる天文学者たちも分業制を敷かざるを得ない現状にあると感じる。古き良き「なんでも屋」は今では”絶滅危惧種”になっているのではないだろうか ―。

 

閑話休題。「SPIE」は、光学およびフォトニクス分野の科学技術の進歩と普及を目指し、1955年に設立された「Society of Photo-Optical Instrumentation Engineers」という学会である。現在では「SPIE – The International Society for Optical Engineering」が正式名称であり、日本語では「国際光工学会」と呼ばれる。SPIEではワークショップの開催・教育プログラムの提供や、光学に関わる査読付き論文誌の出版なども行うが、その最大の活動が国際学会・展示会の開催になる。光学は今や様々な分野・アプリケーションで用いられており、国際学会・展示会もその分野ごとに開催される。筆者が確認しただけでも、会合の数は約30種類もあった。

 

・SPIE Photonics West
・SPIE AR/VR/MR Augmented, Virtual, and Mixed Reality
・SPIE Medical Imaging
・SPIE High-Power Laser Ablation
・SPIE Advanced Lithography
・SPIE Optical Systems Design
・SPIE Optics + Optoelectronics
・SPIE Technologies and Applications of Structured Light
・Pacific Rim Laser Damage
・SPIE Defense + Commercial Sensing
・SPIE Smart Structures + Nondestructive Evaluation
・SPIE Translational Biophotonics
・SPIE Future Sensing Technologies
・Photonics for Quantum
・SPIE Astronomical Telescopes + Instrumentation
・European Conferences on Biomedical Optics
・SPIE Digital Optical Technologies
・SPIE Optical Metrology
・SPIE Photonics Europe
・SPIE Optics + Photonics
・SPIE Sensors + Imaging
・SPIE Photomask Technology + EUV Lithography
・SPIE Laser Damage
・SPIE Optifab
・SPIE/COS Photonics Asia
・SPIE Photonex

 

これら中でも最も大きなものが「SPIE Photonics West」という展示会だろう。日本でも錚々たる企業が招待講演を依頼されたり、展示会に参加したりしているために、聞いたことのある読者の方もおられるかもしれない。こちらは毎年1~2月にアメリカ西海岸で開催されている。今回日本で開催される「SPIE Astronomical Telescopes + Instrumentation」は2年に1度の開催であり、開催国も毎回異なっている(今回はたまたま日本だが、前回の会合はカナダのモントリオールで開催された)。

 

日本におけるこの分野の規模感は先述のとおりだが、国際学会で、かつ大学などの研究機関に所属する研究者だけでなく一般企業の研究者も参加するとなると、さらに大きな会合になることは想像に難くない。まだ参加申し込みが可能なため最終的な参加人数はわからないが、例えばその規模を表す1つの例として、ポスターセッションの話をしたい。学会には通例「ポスターセッション」という、ポスターを使って聴衆に説明するセッションがある。ポスターは研究発表(オーラルセッション)の時間外でも終日掲載されており、たまにオーラルセッションをサボってはポスターを眺め、疑問点があればポスター発表の時間帯に発表者を捕まえてあれこれ質問する、というのが一般的なスタイルだ。ただSPIEでは、このポスターの発表件数があまりにも多いために、ポスターを毎日張りかえることがあるそうだ。そうなると、ただでさえ少ない空き時間に相当数のポスターをチェックすることがかなり難しい。SPIEに参加した経験のある弊社スタッフにいくつか話を聞いてみたが、多数のセッションが平行して開催されるなど、総じて「忙しい学会」であるようだった。なんだかネガティブキャンペーンのようになってしまったが、それだけ関わる人数も多く、非常に活発な学会であるということが伝われば幸いである。

 

今回のSPIE Astronomical Telescopes + Instrumentationでは、弊社からも以下の2件の発表を申し込んでいる。いずれも6/19(水)のポスターセッションにて発表予定だ。

 

・Uchiyama, M. S., et al. “A freeform mirror profiler with a very wide dynamic range and a high precision”
Bessho, T., et al. “A novel application of spectroscopy: Dark Matter Quest Spectrograph”

 

さらにエキシビション(企業の展示ブース)のみであれば、参加費無料で参加ができるとのことだった。お近くにお住まいで、もし興味のある方は参加してみてはどうだろう(私もエキシビションのみ参加します)。参加登録はこちらから。

この記事の監修者プロフィール

小林 仁美

大学院在学時に携わった分光観測、低温実験とデータ解析をきっかけに、 実験・データ解析のサポートビジネスを創案。エストリスタを立ち上げ業務に従事する傍ら、 購買から経理までバックオフィス関連業務を一手に担う。 光学に関する素朴な疑問や分光・天文学に関する記事を主に担当。

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