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光学測定器

調整された平行光ってどれくらい平行なの? コリメーションチェッカーの調整限界(3)

2024.7.25

調整された平行光ってどれくらい平行なの? コリメーションチェッカーの調整限界(3)

前回の記事に引き続き、コリメーションチェッカーで検査可能な平行光の精度について考える。

※ここまでのおさらいは以下のページから
調整された平行光ってどれくらい平行なの? コリメーションチェッカーの調整限界(1)
調整された平行光ってどれくらい平行なの? コリメーションチェッカーの調整限界(2)

 

前回の記事では、拡散板面((X,Y)平面)上に発生する干渉縞が直線で表現され、それが入射ビームの曲率半径と関係していることが明らかになった。いま、直線の傾きを\(\psi\)とすると、

 

$$\tan \left(\frac{\pi}{2}-\psi\right) = \frac{\Delta R}{\Delta Y}\tag{5}$$

 

の関係になるため、拡散板に映った干渉縞の傾き角\(\psi\)と入射波面の曲率半径Rが対応していることが分かる。

 

図1:拡散板上に現れる干渉縞とその傾き角\(\psi\)

 

さらにウェッジ板の表面と裏面のビーム間の傾き角\(\Delta \theta\)を拡散板に映った干渉縞上での物理量(図1)でおきかえることを考えよう。コリメーションチェッカーに入射したビーム径をDとし、コリメーションチェッカに現れる干渉縞の数をmとすると、2つの波面で発生する光路差は\(\sim\Delta\theta = \frac{m\lambda}{D}\)という関係が成り立っているはずであるので、これを式(5)に代入すると、

 

$$R = -\frac{\Delta Y D}{m\lambda \tan(\psi)}\tag{6}$$

 

となる。これが欲しかった式である。式(6)からは、ビームサイズDが大きいほど、表裏で反射するビームのずらし量\(\Delta Y\)が大きいほど、また干渉縞の数が少ないほど、曲率半径が大きくなる(つまりより平行度の高いビームが得られる)。表1は、式(6)に実際に数値を入れた結果である。ここで波長は\(\lambda =0.632\mu m\)(Ne-Neレーザーを想定)、\(\Delta Y =0.3D\)(直径の30%だけビームをずらしたシアリング干渉を想定)、\(\psi\)=3度(干渉縞の光軸に対する一致度は3度以内)としてある。表1からビーム径が小さい場合(3mmの場合)でも、\(|R|=11.6~27.2m\)の平行光が得られることが分かる。ビーム径を25mmまで広げれば、\(|R|=807~1880m\)程度になるが、1m光線が進んだ際の幾何光学的なビームの広がりは13~30\(\mu m\)なので、実用的にはまったく問題にならないレベルだろう。

 

注意点としては、ここでの計算結果は理想的な平面波(球面波)を入射した場合に限られるということである。入射する波面に波面収差が含まれている場合は、現れる干渉縞が直線にならず、また等間隔に並ばないため、\(\psi\)=0度の状態を正確に得ることが難しくなり、その分だけ平行度は劣化する。ただ、透過波面精度が悪い光学系においては、そもそも厳密な平行光を得る必要がないだろうから、それが問題になる例は稀だと考えられる。

 

表1:コリメーションチェッカーで得られる準平行光の曲率半径

 

 

この記事の監修者プロフィール

池田優二

大学院在学中に自らが計画して手掛けた偏光分光装置の開発がきっかけで光学に魅了される。 卒業後民間光学会社に就職し、2006年にフォトコーディングを独立開業。 官民問わずに高品質の光学サービスを提供し続ける傍ら、2009年より京都産業大学にも籍を置き、 天文学と光学技術を次世代に担う学生に日々教えている。 光学技術者がぶつかるであろう疑問に対するアンサー記事を主に担当。

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