本シリーズでは様々なシーンで利用される干渉計について、その原理や応用例などを解説する。前回までの記事では、線形光学干渉計の代表例であるフィゾー干渉計について解説を行った。
本シリーズの記事はこちらから:
さまざまな干渉計:干渉計の分類
さまざまな干渉計:フィゾー干渉計(1)
さまざまな干渉計:フィゾー干渉計(2)
さまざまな干渉計:フィゾー干渉計(3)
本シリーズで解説する干渉計の分類は図1のとおりである。今回はフィゾー干渉計と同じく線形光学干渉計の1つである「トワイマン・グリーン干渉計」について紹介する。
図1:干渉計の分類
トワイマン・グリーン干渉計は、光学素子を検査するために使われるマイケルソン干渉計の一種である。1916年にTwymanとGreenによって発明され、当初はプリズムや顕微鏡対物レンズ、カメラレンズの検査に用いられた。基本的なトワイマン・グリーン干渉計のレイアウトを図2に示す。単色の点光源から出た光は、コリメータレンズによって平行な光束に変換され、ビームスプリッタにより2つの光束に分割される。一方の光は高精度な平面原器(参照面)で反射し、もう一方の光は測定対象(検査面)で反射したのち、再びビームスプリッタで重ね合わせられる。この2つの光は結像系を通じて観察面上に集められ、光路差に応じたフリンジ(干渉縞)が生成される。トワイマン・グリーン干渉計は参照面と検査面の光路が分かれているため、各光路長を調整することができる。そのためコヒーレント長の短い光源であっても使用することができるという点が特徴である。
図2:トワイマン・グリーン干渉計のレイアウト
図2では検査面が平面の場合のレイアウトを示したが、図3では検査面が凹面または凸面の場合のレイアウトを示す。参照面側の光路には平面原器を置き、測定対象側の光路には被検面の前に光線を発散させるための凸レンズが置かれる。フィゾー干渉計と同様に、凹面の場合は測定対象を遠ざけることで光線が広がっていくため、原理的にはどんなに大きなサイズの検査面でも測定が可能であるが、凸面の場合は測定対象を遠ざけると光線が狭くなるため、凸レンズのサイズより大きな検査面を測定することができない。
図3:トワイマン・グリーン干渉計のレイアウト(検査面が凹面と凸面)
次回も引き続きトワイマン・グリーン干渉計の解説を行う。
趣味は天文と写真と車。大学では天文サークルに所属し、暗い空を求めて日本中を飛び回っていた。 天文学を極めるために大学院に進学、在籍中は中間赤外線分光器の開発に従事。 カメラやレンズに関する記事を主に担当。