本シリーズでは様々なシーンで利用される干渉計について、その原理や応用例などを解説する。今回は線形光学干渉計の代表例の1つである「フィゾー干渉計」について紹介する。
本シリーズの記事はこちらから:
さまざまな干渉計:干渉計の分類
さまざまな干渉計:フィゾー干渉計(1)
さまざまな干渉計:フィゾー干渉計(2)
今回の記事を読み進めるまえに、ぜひとも前回の記事を一読いただき、干渉計におけるコントラストの計算方法について復習いただきたい。今回はコントラストの計算式
$$ \mu = \frac{2\sqrt{I_{ref}I_{tes}}}{I_{ref} + I_{tes}} $$
を、フィゾー干渉計で利用できるように変形する。
図1は検査面が平面の場合におけるフィゾー干渉計のレイアウトである。光源からの光は、参照面と検査面で反射して元の光路を戻り、ビームスプリッタで折り曲げられ、観察面上に2ビーム間の光路差に対応したフリンジ(干渉縞)を生成する。参照面の反射率を\(R_{ref}\)、検査面の反射率を\(R_{tes}\)とすると、参照面で反射する光は\(R_{ref}\)倍、検査面で反射する光は\((1- R_{ref})\times R_{tes} \times (1-R_{ref})\)倍されることになる。これより、前述のコントラスト\(\mu\)の式は以下のように書き表せる。
$$ \mu = \frac{2\sqrt{R_{ref}R_{tes}\left(1-R_{ref}\right)^2}}{R_{ref} + R_{tes}\left(1-R_{ref}\right)^2} $$
図1:フィゾー干渉計のレイアウト(検査面が平面の場合)
ここで参照面がノンコートである場合と、コーティングによって反射率を高めた場合とで達成されるコントラストを比較してみよう。まず始めに、参照面がノンコート(\(R_{ref} =0.04\))であるときの\(\mu\)と\(R_{tes}\)の関係を図2に示す。検査面がノンコート(\(R_{tes} \sim 0.04\))であればコントラストは1となるが、検査面が蒸着面(\(R_{tes} \sim 0.99\))であればコントラストは0.4程度まで悪化するため、検査面の反射率次第で縞の見え方(濃淡)が大きく変わることとなる。これは測定精度の低下につながる。
図2:フィゾー干渉計におけるコントラスト\(\mu\)と検査面の反射率\(R_{tes}\)の関係(\(R_{ref} =0.04\)のとき)
次に、参照面をコーティングすることで反射率を高めた場合を考える。ここでは検査面の反射率が4~99%の範囲で変わりうる時、両端で達成するコントラストが最大になるように参照面の反射率を最適化した場合(\(R_{ref} =0.145\))の\(\mu\)と\(R_{tes}\)の関係を図3に示す。図2と比べるとグラフ左端(\(R_{tes} \sim 0.04\))のコントラストは1から0.75に低下したが、その他の部分のコントラストは改善している。\(0.04 \leq R_{tes} \leq 0.99\)の範囲内でコントラストは常に75%以上を達成しているため、検査面の反射率が変化しても縞の見え方が大きく変わることはない。
図3:フィゾー干渉計におけるコントラスト\(\mu\)と検査面の反射率\(R_{tes}\)の関係(\(R_{ref} =0.145\)のとき)
以上より、高いコントラストで測定を行うには、被検面の反射率に合わせて参照面の反射率を調整することが重要であることがわかる。
次回はトワイマン・グリーン干渉計について紹介する。
趣味は天文と写真と車。大学では天文サークルに所属し、暗い空を求めて日本中を飛び回っていた。 天文学を極めるために大学院に進学、在籍中は中間赤外線分光器の開発に従事。 カメラやレンズに関する記事を主に担当。