干渉計は電磁波を含む波の干渉を利用して様々な物理特性を測定する装置であり、光学のみならず、幅広い分野で応用されている。本シリーズでは、様々なシーンで利用される干渉計について、その原理や応用例などを解説する。今回は干渉計全体の「分類」について述べる。
このコラムの読者であれば、干渉計と聞いて思い浮かべるのは光(電磁波、光波)の干渉計であろう。そのような干渉計は利用する光の特性による違いから「線形光学干渉計」「非線形光学干渉計」「量子光学干渉計」の3つに分けられる(図1)。世の中には光以外の波(音波や物質波)を利用する干渉計も存在するが、その紹介はまたの機会に譲り、今回はいわゆる光学干渉計を取り扱う。
各分類の特徴と原理、代表例、用途について、以下簡単に解説する。
CONTENTS
・特徴と原理
- 光波を線形的に足し合わせることができる性質(光の重ね合わせ原理)に基づく。
・代表例
- フィゾー干渉計
- マイケルソン干渉計
- マッハ・ツェンダー干渉計
・用途
- 屈折率や表面形状の測定
- 波長の精密測定
- 重力波観測(※マイケルソン干渉計をベースとしているためここに分類)
・特徴と原理
- 物質の非線形光学特性(光の強度が高い場合に媒質が非線形応答を示す現象)を利用する。
・代表例
- 第二高調波発生(SHG)干渉計
- 光カー効果(Kerr effect)干渉計
・用途
- 超短パルスレーザーの特性解析
- 高速光スイッチや光通信の研究
- 材料科学における非線形材料の研究
・特徴と原理
- 光の量子性を利用し、古典光学では説明できない現象を観測する。
- 単一光子や量子もつれ(エンタングルメント)を利用する。
・代表例
- ホン・オウ・マンデル干渉計
- 量子マッハ・ツェンダー干渉計
・用途
- 量子コンピュータや量子通信等の量子情報処理
- 量子イメージングや量子干渉計型センサー等の高感度センサー技術
- 光子間の相関や非局所性の研究
これらの干渉計は、さまざまな分野で重要な役割を果たしている。線形光学干渉計が基本的な原理に基づく一方で、量子や非線形特性を活用した干渉計も科学技術の最前線で活用されている。次回は「線形光学干渉計」の代表例について紹介する。
趣味は天文と写真と車。大学では天文サークルに所属し、暗い空を求めて日本中を飛び回っていた。 天文学を極めるために大学院に進学、在籍中は中間赤外線分光器の開発に従事。 カメラやレンズに関する記事を主に担当。