Aπραξία

結像光学系

光学収差を理解する:単色収差の分類(2)

2024.8.8

光学収差を理解する:単色収差の分類(2)

本シリーズでは、レンズを使った結像光学系(望遠鏡、カメラ、プロジェクターレンズ等)の光学設計に必要な収差を理解することを目標にする。前回の記事に続き、今回はコマ収差を紹介しよう。 結像光学系の光学設計におけるゴールの一つは、レンズによって発生する像のボケを最小化することである。一般に像のボケは収差と呼ばれ、大きく「単色収差」と「色収差」に分けられる。

コマ収差

コマ収差は、球面収差とは異なり視野中心からの距離に比例した大きさを持つ収差である。視野中心の収差は0だが、視野外収差としては最初に目立ってくるために、球面収差に次いで改善が優先される収差である。コマ収差は、レンズ面を円環状に透過する光線群を考えたとき、主光線よりも外れた位置に円環状のボケを発生させる(図1)。円環中心の外れ量と直径(ボケの大きさ)はレンズ面上の円環光線群の大きさに比例する。ここで1つ注意すべきは、この円環上の光線を円環に沿って1周させると、像面上では円環上を2周する、という事実である。なおこの像面上に現れる複数の円環の包絡線は60度の開き角を持った直線であり、この直線上のエネルギー集中度は周りに比べて高くなる(図1上中央と右)。この部分がボヤっと広がった構造を持つ彗星(comet)に似ていることから、コマ収差という名前を与えられている。図1の下段の左右の画像は、ベストフォーカス位置付近で検出器を前後に動かした場合に得られるコマ収差の変化の様子である。ベストフォーカス位置を対称に同じボケ方が現れる。いずれの場合も、ベストフォーカス位置での像の形状が崩れ、円環状のボケが作り出す2重円が異なる大きさに分離する。その結果、2つの円がクロスする部分の強度が相対的に高くなる(図2)。

 



 

図1:(上段)コマ収差を持つ光学系の光路図(左)とスポット部分のっ拡大図(中央)とシミュレーションによって作ったコマ収差を持つ像(右)。(下段)コマ収差を持つ光学系において、ベストフォーカス位置でも技適な星空を撮影した場合のシミュレーション(中央)とそこから検出器を前後に微小量動かした結果(左右)。

 



 

図2:デフォーカス位置における像の概要図(左)とシミュレーションによって作成したデフォーカスとコマ収差を持つ像(右)。

この記事の監修者プロフィール

橋ケ谷 武志(ゲストライター)

京都大学大学院理学研究科 宇宙物理学教室 博士課程在籍。 研究内容は自由曲面を用いた軸外し光学系の開発。

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