本シリーズでは、各社におけるカメラの手振れ補正機構について、名称の違いから性能の指標について解説をしてきた。今回はその4からその7で解説した手振れ補正機構のメリット・デメリットをまとめて比較を行う。
手振れ補正は「光学式」と「電子式」で分かれる(図1)。「光学式」では、いずれの機構もサイズと重さが増加し、高価になるが、「電子式」ではサイズや重さの変化はなく安価であることが特徴である。ただし、電子式手振れ補正が効果を発揮するのは主に動画撮影であり、静止画撮影ではあまり効果が無いため、その補正効果はカメラというよりビデオカメラ的な使用用途の時のみに限定される。
光学式手振れ補正は「レンズ内」「ボディ内」「レンズ・ボディ協調」の3種に分かれている。「レンズ内手振れ補正」は基本的にチルトぶれのみの対応となるが、デジタルカメラ/フィルムカメラの双方で使用でき、ライブビュー画像/ファインダーの双方で有効であるため、往年のフィルム一眼レフカメラから最新のデジタルミラーレスカメラまで対応しており、幅広いボディ形式に対して有用である。また、広角域から望遠域のいずれの撮影でも有効である。
「ボディ内手振れ補正」は光学式ファインダーへの補正効果が無いため一眼レフでの撮影時には効果が無く、望遠レンズ使用時には効果が低いというデメリットがあるが、オールドレンズを含む全ての取付可能レンズ(ボディマウントに適合するネイティブレンズに加え、マウントアダプターを使用して取り付ける非ネイティブレンズも含む)で手振れ補正を使用できるため、幅広いレンズに対して有用である。また、5軸すべての手振れに対応可能している。
「レンズ・ボディ協調制御」では、レンズとボディの双方に手振れ補正機構を搭載する必要があるためとても高価になり、協調制御に対応するレンズ・ボディの組み合わせが限られているが、最も強力な手振れ補正効果を得ることができる。また、レンズ内手振れ補正とボディ内手振れ補正の双方が使用できるため、お互いのデメリットを補うことができ、最も汎用性が高い。
近年のミラーレスカメラでは4000万画素以上の高画素センサーの搭載が一般的になってきているが、このようなカメラは画素ピッチが細かいため、わずかな手振れでも影響を受けて撮影画像がぶれてしまう。ゆえに、現代のカメラでは手振れ補正機構の搭載は必須となっている。最新の光学設計では、手振れ補正機構の搭載によるサイズや重さの増加、光学性能の劣化は最小限に抑えられており、(価格が上がること以外で)手振れ補正機構を搭載するデメリットは無い。よって、今後のカメラ撮影では積極的に手振れ補正機構を使用して、簡単かつシャープな画像を撮影していただければ幸いだ。筆者としては、今後、電子式手ぶれ補正に「AI手ぶれ補正」が加わり、お財布にも優しい手ぶれ補正機構が実現されることを切に願っている。
これまでの記事については以下より復習いただきたい。
各社における名称の違い 各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その1
手振れ補正の性能を表す用語 各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その2
手振れ補正の性能を表す用語(その2の続編) 各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その3
レンズ内手振れ補正の原理 各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その4
ボディ内手振れ補正の原理 各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その5
レンズ・ボディ協調制御の原理 各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その6
電子式手振れ補正 各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その7
趣味は天文と写真と車。大学では天文サークルに所属し、暗い空を求めて日本中を飛び回っていた。 天文学を極めるために大学院に進学、在籍中は中間赤外線分光器の開発に従事。 カメラやレンズに関する記事を主に担当。