“石英”と”石英ガラス”は違うの記事にて、各メーカーにおいて様々な石英ガラスがラインナップされていることを紹介した。今回は各社製品の紹介する。用途に応じた選定の際の参考になれば幸いである。
今回の記事では、以下のメーカーの石英ガラス、中でも主としてレンズ等の光学素子に採用されるシリーズを紹介する。
<国内メーカー>
・東ソー株式会社:ESシリーズ、EDシリーズ
・信越石英株式会社:SUPRASIL-Pシリーズ
・株式会社ニコン:NIFSシリーズ
・AGC株式会社:AQシリーズ
・株式会社オハラ・クォーツ:SKシリーズ
<海外メーカー>
・Corning:HPFS Fused Silica(7979、7980、8655)
・Heraeus:Suprasilシリーズ
なお比較する項目は脈理方向、均質性、複屈折、蛍光、OH含有量(赤外線領域の透過率に影響)とした。なお透過率曲線は各社のwebページおよびカタログより入手していただきたい。
CONTENTS
ESシリーズは四塩化ケイ素(SiCl4)を酸素・水素の混合ガス環境下で加水分解・溶融して製造(直接法、III)される。EDシリーズは同じく四塩化ケイ素(SiCl4)を原料とした多孔質の母材(スート)から水分を飛ばして焼成するVAD法(Vaper-phase Axial Deposition、スート法)にて製造される。後者は水分を飛ばす処理が行われるため、ESシリーズに比べてOH含有量が少ないという特徴がある。
信越石英ではHeraeus社から光学用石英ガラス製造技術を導入している。シリーズ名称「SUPRASIL」はHeraeus社とも共通している。OH含有量はシリーズごとの詳細数値がないため、透過曲線から判断する必要がある。
NIFS-V以外は主に紫外線領域にて用いられることが想定されている。大型のインゴット製造も対応。
VAD法にて製造され、いずれの製品も3方向脈理フリーである。OH含有量はシリーズごとの詳細数値がないため、透過曲線から判断する必要がある。
VAD法にて製造され、いずれの製品も1方向脈理フリーである。
Corningはアメリカの材料メーカーで、石英も対応している。エドモンド・オプティクス社で販売されている10/\(\lambda\)合成石英ウィンドウはCorning社の材料を採用している。
ドイツに本社を置くメーカー。ラインナップが最も豊富。
以下はよく出てくるアプリケーションごとに各社のどの製品を選定すればよいかをまとめた。
OH含有量は関係なく、1方向以上で脈理フリーであればよい。
OH含有量が少なく、1方向以上で脈理フリーであればよい。
OH含有量は関係ないが、均質性が高くレーザー耐性があればよい。エキシマレーザーを用いる場合はエキシマレーザー耐性についても確認すること。
これら以外にも、ファイバー製品やプリズム製品(3方向脈理フリー)などのアプリケーションに用いる際も、ぜひ各社の製品リストを参考に選定してみてほしい。
大学院在学時に携わった分光観測、低温実験とデータ解析をきっかけに、 実験・データ解析のサポートビジネスを創案。エストリスタを立ち上げ業務に従事する傍ら、 購買から経理までバックオフィス関連業務を一手に担う。 光学に関する素朴な疑問や分光・天文学に関する記事を主に担当。