Aπραξία

結像光学系

虹を理解する その3

2023.11.30

虹を理解する その3

前回の記事「虹を理解する その2」では、太陽光がが虹色に分かれる理由が、液滴の波長ごとの屈折率の違い(分散)であることを説明した。ただこれだけでは、いつどんな場所でも(砂漠など液滴がない状況でない限りは)虹が見えも良いように思える。また、虹が円環状に見える理由も判然としない。今回は虹が特定の条件下でしか見えない理由と円環に見える理由を説明する。

図1は、水滴(屈折率n=1.33)に太陽光が入射した場合の光路をシミュレーションしたものである。水滴に届いた太陽は、水滴の半球面全面を照射するはずであるが、図1ではみやすさのために1/4球面に照射する光のみを描いている(①)。波長は633nmに固定している。まずは水滴の中心線上にある光線について見てよう。この光線は水滴面に垂直に入射する(入射角が0度である)ため、境界面での屈折は起きず、そのまま反対の境界面から放出される(②)。次に光軸から少しだけ高い場所に入射した光線について見てみると、水滴に入射した後わずかに屈折し、反対側の境界面の入射光よりも少し低い場所に到達する。その後大部分の光は境界面で屈折し、水滴外に放出されるが、一部の光は境界面で反射して、入射面のさらに低い場所(水滴を時計に見立てると、9時前くらいの位置)に到達する(③)。徐々に入射光を高く(入射角を大きく)していくと、水滴内の反射光の入射面側到達位置は8時、7時、6時・・・と反時計まわりに変化していく。

 

ところが、である。光線がある高さを超えると、反射光はそれ以上反時計まわりに移動した位置には到達せず、時計まわりに変化するようになる(④)図1の④にその光線を示しているが、入射面での屈折が大きくなった結果、反対の境界面での到達位置がより低い位置になっていることがわかる。この結果、入射面側に到達する光が時計まわりに変化するようになるのである(幾何光学に詳しい読者むけに言えば、光線高度が大きくなることで、大きな球面収差が発生しているのである)。

 


図1:水滴(φ5μm)内を通る光線(633nm)の様子。①〜④は本文を参照のこと。


 

反射光到達位置の変化が反時計まわりから時計まわりに切り替わる場所のあたりでは、光線密度が高くなる。この密度の高い光線群は入射側の境界面から放出されるが、入射光(太陽の方向)との角度を測ると約42度であることがわかる。この数値にピンとくる方もいるだろう。そう、虹が発生する角度として紹介されている値だ。虹は、水滴の面のうち入射側と反対側の境界面で反射した光が再度反射して、入射面側へと向かう過程で一部の光のみ密度が高くなり、それが水滴外へと放射された光なのである。図からもわかるように、水滴内で反射して入射面側から放出される光は、あらゆる方向に存在するのだが、約42度の方向の光線が他の光線よりも密度が高いため、コントラストが高くなって空中に浮き上がって見えるのである。観測者がこの42度の方向にいる場合に虹が観測される。なお初等解説書の中には、入射したすべての(ほとんどの)光が42度の方向に放出される(結果、虹ができる)と記載されているものもある。そのため多くの人が虹が見える理由を誤認している現状があるように思う。

 

なお図では、2次元平面の光線のみが記載されているが、水滴は球形であるため、密度の高い光線群は光軸を中心として円錐状に放射されることになる。それを観測者が見た場合には円環状になるはずだ。ただし巨大な円環のすべての範囲が見えることは稀である。なぜなら、円環の下部を構成する虹の成分は地上からの観測の場合地平線より下に存在することになり、上部から放出されている光線に比べ圧倒的に光量が少なくなるためである(おそらく、地面と重なった結果コントラストが下がり、みえないということもあるのだろう)。また虹を高いコントラストで見るためには、42度方向の光を視線方向にたくさん重ねる必要がある。そのためには、水蒸気中の水滴が大きく(厳密には大きければ大きいほどよいわけではない)、かつ水滴の量が多くなければならない。これが雨上がり(=湿度が高く、大気中に大量の水滴が存在している状況)でしか虹が見られない理由である。

 

ここまで「虹」について3回にわたり紹介してきたが、水滴が関連する大気発光現象は虹以外にも「光芒」や「ブロッケン現象」など、他にも多数ある。それらについてはまた別の機会に紹介しよう。

この記事の監修者プロフィール

小林 仁美

大学院在学時に携わった分光観測、低温実験とデータ解析をきっかけに、 実験・データ解析のサポートビジネスを創案。エストリスタを立ち上げ業務に従事する傍ら、 購買から経理までバックオフィス関連業務を一手に担う。 光学に関する素朴な疑問や分光・天文学に関する記事を主に担当。

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