Aπραξία

結像光学系

虹を理解する その2

2023.10.26

虹を理解する その2

前回の記事「虹を理解する その1」では、太陽光が大気中の水滴に入射して、どのように進むのか(水滴内を進む光の光路)を紹介した。水滴に入射した太陽光は、屈折と反射を繰り返し、最終的には水滴外へと進んでいく。

ただこれだけでは光が水滴の中を通って虹色に分かれる理由になっていない。光が虹色に分かれるのは、水滴内を進む光の速度(つまり屈折角)が色ごとに異なるためである。

 

光は波の性質を持つが、波の1周期の長さ(波長)の違いが人間には色の違いとして認識される。目で見える光の波長はおよそ380〜700nm程度であり、波長が短いほど青く、長いほど赤く見える。屈折は媒質中を進む光の速度が異なることで、異なる媒質の界面で光が曲がる現象だが、この屈折角(つまりは屈折率)が波長によって異なっている。目で見える波長(可視光域)の場合には青い光ほど屈折率が大きく(光の屈折度合いが強く)、赤い光ほど屈折率が小さい(光の屈折度合いが弱い)ことがわかっている。

 

図1:目で見える光(可視光線)の波長

 

この屈折率の波長依存性のことを専門的には「分散」と言うが、分散についての説明は別の機会に譲ることにする。ここでは端的に、屈折率と波長の関係を示した経験式のうち、よく使われているものを紹介しよう。ドイツの理論物理学者のウォルフガング・セルマイヤーが1870年代に波長(\(\lambda\))と屈折率(\(n(\lambda)\))の関係を表す経験式(セルマイヤーの式)を提案した。

 

$$ n^{2}(\lambda)=1+\sum_{i}\frac{B_{i}\lambda^{2}}{\lambda^{2}-C_{i}} $$

 

Bi、Ciは物質によって決まる定数である。なお光学ガラスとしてよく利用されるBK7のi=3までのBi、Ciは以下の値が与えられている。

 

表1:BK7におけるセルマイヤーの経験式の係数B、Cの値(i=3)

 

なおこの分散を示す式はセルマイヤーの経験式以外にも複数存在しているが、セルマイヤーの経験式は分散理論から得られる理論式とも整合している。セルマイヤーの経験式から、\(\lambda\)の値が大きいほど、屈折率nが小さい値をとることがわかる。

 

図2:波長による屈折率の違い(分散)模式図

c

 

まとめると、水滴に入射した太陽光が、この分散の効果によって波長ごとに水滴内を進む光路が変化し、その結果光が色ごとに別れて水滴から出てくるようになるのだ。しかし勘の良い読者の方はこう思ったかもしれない。「あれ?これだけでは、どんな方向にも虹が放出されるはずでは?」と。。。そう、この効果だけではいつ、どこでも虹が見えるわけではないこと、ひいては円環状に見える理由にもなっていないのだ。

 

次回は、水滴の中を進む光を具体的にシミュレーションし、虹が見える条件が限られている理由と、円環状に見える理由について紹介しよう。

この記事の監修者プロフィール

小林 仁美

大学院在学時に携わった分光観測、低温実験とデータ解析をきっかけに、 実験・データ解析のサポートビジネスを創案。エストリスタを立ち上げ業務に従事する傍ら、 購買から経理までバックオフィス関連業務を一手に担う。 光学に関する素朴な疑問や分光・天文学に関する記事を主に担当。

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