今回は筆者の趣味であるカメラに関する話をしたい。
カメラは世界に誇れる日本の主要産業であり、実に世界シェアの9割以上を日本が占めている(図1)。
そんな日本にはカメラメーカーが多数存在しており、様々な種類のカメラを購入することができるが、メーカーごとに各機能に対する命名が異なっており、各社が独自の特色を出していると言えなくもないが、結局何をどう比較してよいのかわからない方も多いのではないだろうか。
そこで今回は、カメラメーカー各社で使用しているカメラ用語の違いについて紹介していこう。
カメラにおける手振れ補正は、カメラボディやレンズに内蔵された、手ぶれによる像の乱れを軽減させる仕組みのことを指す。手振れは望遠撮影やシャッタースピードが遅い(=画像1枚の露光時間が長い)場合に発生しやすいが、近年はセンサーの高画素化が進んでいて、広角や通常のシャッタースピードでの撮影であっても、わずかな手振れの影響が可視化されたように感じる。
最新のデジタルカメラにはさまざまなタイプの手振れ補正機構が搭載されており、手振れの影響を軽減している。手ぶれ補正の原理については、また別の記事にて紹介したい。
図2はカメラの手振れ補正機構を樹形図にまとめた図である。
手振れ補正は大きく分けて光学式と電子式の2つに分けられる。光学式はレンズシフト方式であるレンズ内手振れ補正、イメージセンサーシフト方式であるボディ内手振れ補正、これら2つを合わせて使用するレンズ・ボディ協調制御の3つの方式がある。これらの実現にはレンズとボディのそれぞれで特殊な機構を搭載する必要がある。電子式はソフトウェア上で補正を行うものであり、方式別に分かれていない。
さまざまなメーカーの手振れ補正機能の名称は、意外にも、レンズ内手振れ補正以外の名称はほぼ統一されており、それぞれ図2に記載した名称で呼ばれていた。しかしレンズシフト方式については各社で名称が異なっており、国内主要メーカー10社におけるレンズ内手振れ補正の名称(表1)からもわかるように、非常に難解になっている。
FUJIFILMとPanasonicの名称が同じだが、その他は「Stabilizer」「Stabilization」「Steady」のように微妙に単語を変えて被らないようにしており、略称にいたってはピリオドをつけるなどして同じものは1つもなかった。だが、異なる名称の中にも共通点はあり、多くのメーカーで始めに「Image」「Optical」を使用し、後半に「Stabilizer」を使っている。
ちなみに筆者は、表1の手振れ補正のうち5つを使用したことがあるが、手振れ補正の効き具合の強弱はあるものの、使い勝手は変わらないと感じた。
なぜこのように名称を使い分けているのだろうか。原因が今なにかと話題の商標にあるかと考え、表1の10種類の名称に関する商標登録を調べてみた。結果は表2の通りであり、NikonとCanonの2社からしか商標は出ていなかった。登録の順番から考えて、初めにNikonが「VIBRATION REDUCTION SYSTEM」で商標登録したために、後発のCanonがそれを避けて別名で登録したのは間違いないだろう。この場合、FUJIFILMとPanasonicの名称が同じであり、商標に抵触しそうなのが少し心配である。
結局、商標を調べても手振れ補正の名称を使い分けている理由を突き止めることはできなかった。名称は異なれど、同じ機能であることは間違いない。もしカメラを購入するにあたって機能を比較する際に「なにが違うんだろ?」となった場合にはぜひこの記事を思い出してほしい。
趣味は天文と写真と車。大学では天文サークルに所属し、暗い空を求めて日本中を飛び回っていた。 天文学を極めるために大学院に進学、在籍中は中間赤外線分光器の開発に従事。 カメラやレンズに関する記事を主に担当。