Aπραξία

回折光学素子

CGHを理解する:CGHの応用例(干渉計を用いた非球面測定)

2025.4.10

CGHを理解する:CGHの応用例(干渉計を用いた非球面測定)

Computer Generated Hologram(計算機生成ホログラム、CGH)は、光の回折・干渉の効果を使い、任意の方向に光を飛ばす(波面を作る)ことが可能な光学素子である。今回はCGHの使用例として、干渉計と組み合わせた非球面測定について紹介する。

CGHは干渉計と組み合わせて使用されることがよくある。特に非球面形状を持つミラーやレンズなどの光学素子の製造時の形状測定において、CGHと干渉計を組み合わせることが多い。図1にCGHと干渉計を用いた非球面ミラーの形状測定系の例を示す。

 

図1:CGHと干渉計を用いた非球面ミラーの形状測定系の例

 

この例ではFizeau型レーザー干渉計から出射したコリメートビームがCGHに入射し、非球面ミラーの形状測定用のビームが形成される。ビームは非球面ミラーによって垂直に折り返され、再度CGHを通過することでコリメートビームになり、レーザー干渉計に戻るという構成である。レーザー干渉計は、コリメートビームとして波面誤差を測定するが、得られた誤差を非球面ミラーの形状誤差として評価する。

 

CGHを使った非球面光学素子の測定には、ヌルレンズに比べ、いくつかの利点がある。

 

  • CGHがヌルレンズとして機能する(CGHヌルと呼ばれる)ため、通常のヌルレンズが不要で形状測定誤差も発生しない。
  • 被検面が軸外し非球面や自由曲面の場合、通常のヌルレンズは設計・製造及び被検面の測定が極めて難しくなるが、CGHの場合は球面と同程度の難度で設計・製造・測定が可能である。
  • CGHの製造コストは被検面の形状の詳細にほとんど依存しない。これは形状が複雑になるほどコストメリットが生じるという意味である。
  • 最近では大型のCGHの製造も可能になってきているため、大型の凸非球面の測定も可能になりつつある。
  • CGH-干渉計間、及びCGH-非球面間のアライメント用のビームをCGHから出すことが出来るため、アライメントを容易かつ高精度に行うことができる。
  • CGH由来の測定誤差はCGHを理解する:CGHで発生する波面誤差の記事で説明したように、高い精度で補正が可能である。
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    このような理由から、CGHと干渉計の組み合わせによる非球面光学素子の形状測定は、非球面光学素子の製造・検査において1つの欠かせない技術要素となっている。

    この記事の監修者プロフィール

    別所 泰輝

    大学院在学中は素粒子物理学を専攻。趣味の天体写真も物理理論に裏付けられた解析方法を行っており、 アマチュア天文家の間で蔓延している都市伝説は一切信じない。赤道儀マニアでアマチュア天文機器にやたら詳しい。 計算機ホログラム(CGH)や干渉計などの高度な物理計算を軽々とこなす。 光学・物理学に関連する原理や数学的理解に関する記事を担当。

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