Aπραξία

光学測定器

さまざまな干渉計:トワイマン・グリーン干渉計(3)

2025.6.19

さまざまな干渉計:トワイマン・グリーン干渉計(3)

本シリーズでは様々なシーンで利用される干渉計について、その原理や応用例などを解説する。前回に引き続き、トワイマン・グリーン干渉計について紹介する。

本シリーズの記事はこちらから:
さまざまな干渉計:干渉計の分類
さまざまな干渉計:フィゾー干渉計(1)
さまざまな干渉計:フィゾー干渉計(2)
さまざまな干渉計:フィゾー干渉計(3)
さまざまな干渉計:トワイマン・グリーン干渉計(1)
さまざまな干渉計:トワイマン・グリーン干渉計(2)

 

今回の記事を読み進める前に、ぜひとも前々回の記事前回の記事を一読いただきたい。今回はトワイマン・グリーン干渉計のビームスプリッタに求められる面精度について解説する。

 

基本的なトワイマン・グリーン干渉計のレイアウトを図1に示す。単色の点光源から出た光はコリメータレンズで平行な光束となり、ビームスプリッタに入射して高精度な平面原器(参照面)へ向かう光線と、測定対象(検査面)へ向かう光線の2つに分割される。2つの光線は各面で反射し、再びビームスプリッタで重ね合わせられ、結像系を経て観察面上に集められ、光路差に応じたフリンジ(干渉縞)が生成される。ここで、ビームスプリッタにはキューブ型もしくは図1に示す平行平板があるが、今回は平行平板の各面に求められる面精度について考える。

 

図1:ワイマン・グリーン干渉計のレイアウト

 

図2はビームスプリッタの面精度が悪い時、すなわち各面での厚みに誤差(\(\delta t_{1},\delta t_{2},\delta t_{3}\))がある場合の光線図である。参照面と検査面を通る2光路は、各面を以下のように反射・通過をして伝搬していく。
・参照面を通る光路A:面1を反射 → 参照面を反射 → 面1を通過 → 面3を通過
・検査面を通る光路B:面1を通過 → 面2を通過 → 検査面を反射 → 面2を通過 → 面1を反射 → 面3を通過
光路Aと光路Bで発生する光路差、すなわち波面誤差を求めることで、ビームスプリッタに求められる面精度を決めることができる。

 

図2:ビームスプリッタに厚みの誤差がある場合の光線図

 

まず始めに、斜入射した光が面を反射・通過する際に発生する光路差OPD(Optical Path Difference)の一般式を紹介しよう。図3は斜入射した光の反射後の光路差を表す。入射角を\(\theta\)、厚みを\(t\)としたとき、理想光線に対する光路差\(OPD_{\text{ref}}\)は以下の式で与えられる。

$$ OPD_{\text{ref}} = -2t\cos{\theta} \tag{1}$$

 

図3:斜入射した光の反射後の光路差

 

図4は斜入射した光の通過後の光路差を表す。屈折角を\(\theta^{\prime}\)、屈折率を\(n\)としたとき、光路差\(OPD_{\text{pas}}\)は以下の式で与えられる。

$$ OPD_{\text{pas}} = \frac{t}{\cos{\theta^{\prime}}}(n – \cos{(\theta-\theta^{\prime})}) $$

この式を加法定理およびスネルの法則を使用して変形すると、

\begin{align}
OPD_{\text{pas}} &= \frac{nt}{\cos{\theta^{\prime}}}-t\cos{\theta} – \frac{t\sin{\theta^{\prime}}\sin{\theta}}{\cos{\theta^{\prime}}}\\
&= \frac{nt}{\cos{\theta^{\prime}}}-t\cos{\theta} – \frac{nt\sin^2{\theta^{\prime}}}{\cos{\theta^{\prime}}}\\
&= \frac{nt}{\cos{\theta^{\prime}}}-t\cos{\theta} – \frac{nt}{\cos{\theta^{\prime}}} + nt\cos\theta^{\prime}\\
&= t(n\cos\theta^{\prime}-\cos\theta)\tag{2}
\end{align}

となる。

 

図4:斜入射した光の通過後の光路差

 

次回は式(1)、(2)を使って「参照面を通る光路A」と「検査面を通る光路B」で発生する光路差の式を導き、ビームスプリッタに求められる面精度を算出する。

この記事の監修者プロフィール

内山 允史

趣味は天文と写真と車。大学では天文サークルに所属し、暗い空を求めて日本中を飛び回っていた。 天文学を極めるために大学院に進学、在籍中は中間赤外線分光器の開発に従事。 カメラやレンズに関する記事を主に担当。

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