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結像光学系

各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その7

2024.9.26

各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その7

本シリーズでは、各社におけるカメラの手振れ補正機構について、名称の違いから性能の指標について解説をしてきた。前回に引き続き、手振れ補正機構の各種原理について解説する。

これまでの記事については以下より復習いただきたい。
各社における名称の違い 各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その1
手振れ補正の性能を表す用語 各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その2
手振れ補正の性能を表す用語(その2の続編) 各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その3
レンズ内手振れ補正の原理 各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その4
ボディ内手振れ補正の原理 各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その5
レンズ・ボディ協調制御の原理 各社のカメラ用語の違い1:手ぶれ補正 その6

 

今回は電子式手振れ補正について解説する。

 

図1:手振れ補正の種類

 

電子式手振れ補正は、レンズやイメージセンサーを動かさずに固定したまま、画像処理によって電子的に手振れを補正する方法である。この方法は静止画に対してではなく、主に動画を撮影する際に有効である。動画で問題となる手振れは静止画と異なり、静止画では1枚の画像の中で被写体がぶれることが問題となるが、動画では連続的に撮影した複数の画像間で被写体の位置がずれてしまうことが問題となる。そこで電子式手振れ補正では、イメージセンサーの全画素を使って撮影した画像の一部をトリミングし、そのトリミング範囲を上下左右に調整することで被写体の位置を合わせ、手振れをキャンセルする。具体的には、1コマ目に撮影した画像と2コマ目に撮影した画像を比較し、有効画素領域(トリミングする領域)をシフトすることによって、全画素領域より1周り小さいが位置ずれの無い画像が記録されることになる(図2)。

 

図2:電子式手振れ補正のイメージ

 

電子式手振れ補正はソフトウェアだけで対応可能であり、追加パーツなどのハードウェアでの対応が不要なため、機材のサイズや重量の変化はなく、コストも安い。しかし、トリミングによってイメージセンサーの全ての画素を使い切ることができず、出力される画素数が下がり、画像が粗くなるデメリットがある。また、トリミングによって画角が狭くなってしまう。

 

電子式手振れ補正のメリットとデメリットは以下のとおりである。

 

【メリット】
・動画撮影時に有効
・ソフトウェア側だけで対応可能なため、サイズや重量の変化はなく、コストも安い

 

【デメリット】
・静止画撮影ではあまり効果がない
・トリミングによって出力される画像の画素数が下がる。画角が狭くなる

 

また、最近はAIが画像を自動分析し、手振れやピンボケを補正して鮮明化するツールが登場している。この技術は撮影後の画像に対して適用することが可能で、ほぼ手間をかけず簡単に補正を行えてしまう。補正精度は日々向上しており、今後のAIの更なる進化によって「AI手振れ補正」が最もポピュラーになる日が来るかもしれない。

この記事の監修者プロフィール

内山 允史

趣味は天文と写真と車。大学では天文サークルに所属し、暗い空を求めて日本中を飛び回っていた。 天文学を極めるために大学院に進学、在籍中は中間赤外線分光器の開発に従事。 カメラやレンズに関する記事を主に担当。

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