Aπραξία

結像光学系

波面収差の定量化:波面収差の定義とその定式化(4)

2025.9.18

波面収差の定量化:波面収差の定義とその定式化(4)

本シリーズでは、収差の表現を波面収差と呼ばれるものに拡張し、その定式化を目標にする。前回に引き続き、波面収差関数の各項を詳細に見ていこう。

本シリーズのこれまでの記事はこちらから:
波面収差の定量化:波面収差の定義とその定式化(1)
波面収差の定量化:波面収差の定義とその定式化(2)
波面収差の定量化:波面収差の定義とその定式化(3)

おさらいではあるが、光学系が回転対称かつ(光軸を含んだ)平面対称である場合、波面収差関数は以下の形式で記述できる。

\begin{align} W(\vec{\rho}, \vec{H}) =\ & W_{000} + W_{020}(\vec{\rho} \cdot \vec{\rho}) + W_{111}(\vec{H} \cdot \vec{\rho}) + W_{200}(\vec{H} \cdot \vec{H}) \notag \\ & + W_{040}(\vec{\rho} \cdot \vec{\rho})^2 + W_{131}(\vec{H} \cdot \vec{\rho})(\vec{\rho} \cdot \vec{\rho}) + W_{220}(\vec{H} \cdot \vec{H})(\vec{\rho} \cdot \vec{\rho}) \notag \\ & + W_{222}(\vec{H} \cdot \vec{\rho})^2 + W_{311}(\vec{H} \cdot \vec{H})(\vec{H} \cdot \vec{\rho}) \notag \\ & + W_{400}(\vec{H} \cdot \vec{H})^2 + \cdots \end{align}

この展開式において\(n=i+j\)をその項の”次数”と呼ぶ。前回はザイデル収差と密接に関連する\(n=4\)(4次)の項のうち、\(W_{040}, W_{222}, W_{220}\)の解説を行った。今回は残りの\(W_{311}, W_{131}\)について解説する

 

\(W_{311}\)の項

この項は次のような式で表される。

$$W_{311}\text{の項} = W_{311}(\vec{H} \cdot \vec{H})(\vec{H} \cdot \vec{\rho})\tag{1}$$

式を見ると、\((\vec{\rho} \cdot \vec{H})\)の部分が\(W_{111}\)の項と同じで視野に比例した大きさの波面の傾斜を表すことがわかる(こちらの記事 を参照)。さらに、\((\vec{H} \cdot \vec{H})=|\vec{H}|^2\)がかかっているので、\(W_{311}\)の項は視野の3乗に比例して横倍率が近軸横倍率からずれている状態である。つまり、\(W_{311}\)の項はザイデル収差の歪曲に対応する。

 

図1:(左)\(W_{311}\)の波面収差の断面図 / (右)視野の各点での\(W_{311}\)の形状をカラーマップでプロットしたもの

 

 

\(W_{131}\)の項

この項は次のような式で表される。

$$W_{131}(\vec{H} \cdot \vec{\rho})(\vec{\rho} \cdot \vec{\rho}) = W_{131} \rho^3 H cos \theta\tag{2}$$

ここで\(\vec{H}\)を固定して考える(ある\(\vec{H}\)について考える)。この時得られる波面形状を図2の左に示している。また、図2の左図の勾配ベクトルを中央に記載した。一般に任意の光線の理想結像点からのズレ(幾何収差)は波面誤差の勾配ベクトルに比例する。図2中央の勾配ベクトルを始点を一致させて図示させたものが図2の右図である。始点は、主光線の結像点(ベクトルがゼロの点)と考えることができるので、像面での結像点(のずれ)を表していると考えることができる。なお、図2の中央の図を見ればわかるように、同一輪帯(\(R\))上において点対称な位置にある2つの勾配ベクトルは(向きも大きさも)等しいことがわかる。したがって、図2の中央図の同一輪帯上の1周は像面上(図2(右))では2周分の円環に対応する。さらに、式からもわかるようにこの項は\(H\)に比例して大きくなる(図3)。\(W_{131}\)の項はザイデル収差のコマ収差に対応する。

 

図2:(左)\(W_{131}\)の波面収差マップ / (中央)左図の勾配ベクトルを輪帯(R)ごとに色を変えて表示したもの / (右)中央の図の勾配ベクトルの始点を合わせて表示したもの

 

 

図3:視野の各点での\(W_{131}\)の形状をカラーマップでプロットしたもの

 

この記事の監修者プロフィール

橋ケ谷 武志(ゲストライター)

京都大学大学院理学研究科 宇宙物理学教室 博士課程在籍。 研究内容は自由曲面を用いた軸外し光学系の開発。

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