Aπραξία

結像光学系

虹を理解する その1

2023.10.4

虹を理解する その1

雨上がりによく見られる虹。ここ数年、ゲリラ豪雨などの影響もあってか、個人的には頻繁に見えるようになったなぁと思っているが、なぜ虹が見えるのかについて深く考えたことはあるだろうか?

webサイトなどで述べられているのは、雨上がりの大気中にたくさん含まれる水滴に太陽光が入射すると、出てくる光が虹色に分かれ、虹となって見える、という類のもの。説明とともによく描かれている図は概ね以下のようなものだろう。

 


図1:虹の説明の模式図


 

筆者も学生時代は「まぁそんなものかなぁ」と思っていたが、よくよく考えると、このざっくりとした説明ではわからないことが多いと気づいた。

たとえば、上記の説明では、虹が各色に分離されるのは雨粒のせいだということは大まかに述べられているが、虹が円環状に見える理由までは述べられていない。また雨粒の中で具体的に何が起こって各色に分離されるのか、深いところまで述べられていない。さらには、虹はこれまでの経験から雨上がりには必ず見られるものではないし、時間帯や見える方向も限定的だが、そのあたりについても説明が不足しているように思う。そこで今回は、虹という現象をもう少し掘り下げて考えてみたいと思う。

 

まず、虹が見える状況を少し整理してみよう。

・雨上がり、あるいは天気雨の場合に見られるが、このような状況でも必ず見られる訳では無い

・虹が見えるときは必ず太陽が出ており、見える方向は太陽とは反対側である

・見える時間帯は(日本では)午前中や夕方に限られる

 

これらの状況から、以下の2点が推測できるだろう

(1)太陽光と大気中の水滴(雨粒)が関連している(これは先述の「ざっくりとした説明」と矛盾がない)

(2)太陽と我々との位置関係(角度)が関係する

 

まずは(1)の太陽光と大気中の水滴について考えていこう。具体的には、大気中を進む太陽光が水滴に入射した際に何がおこっているのか、を考える。

なお、光が物質に入射する際に互いに及ぼす影響のことを専門的には「光と物質の相互作用」と言い、この「物質」のサイズや形、屈折率のほか、光が入射する角度など、様々な条件の違いによって観測される現象が異なることが知られている。物質の境界に立てた法線と入射光のなす角を入射角という。この定義に従うと、物質に対して真上からまっすぐ入射する場合は入射角=0度であり、斜め入射になっていくほど入射角は大きくなる。

図2:入射角

 

虹が見られるような水滴(雨粒)の場合、大きさは0.1〜数mm程度で、形は球形をしている。(余談だが、雲に含まれる水滴の大きさは0.001〜0.01mm程度であり、それらが雲の中で大きくなり、空気抵抗に逆らって落下してきたものが雨粒である。サイズによっては落下面の中央部が凹んだ形状になるが、おおよそ球形と考えて問題ない。)

物質は「水」になるわけだが、この物質の種類によって実は光の進みにくさ(物質内部での光速)が異なる。この「光の進みにくさ」が異なることで「屈折」と呼ばれる現象が発生し、この進みにくさは「屈折率」という物理量で示される。屈折率についてはまた別の機会に詳しく説明するが、空気中を進む光が水に入射すると、光は約1.3倍進みにくくなることが知られている。なお入射角が0度の場合、光は屈折しない。

 

ここにさらに太陽光がどのように水滴に入射するのか(入射角)によって、光がどのように進むのかが異なるのだが、その前に、水滴に入射する光はすべてが水滴の中に進入できるとは限らず、一部の光(全体のおよそ4%)はその表面で反射される。このように境界で反射されてしまうと、光は虹色に分かれることも何もなく、そのまま進行方向が変わるだけになる。水滴と空気との境界に対して、垂直に入射する場合(=入射角が0度の場合)、ほとんどの光は屈折せずに水滴の中を直進し、そのまま反対側の境界から水滴外に抜ける(が、上述のとおり一部の光は境界で反射する)。一方、この垂直入射光の中心からずれた場所に入射する光は、続いて水滴と空気との境界に対して斜入射することになる。この場合に光は屈折し、反対側の境界にぶつかる。このとき大半の光はそのまま屈折し、水滴の外に出ていくが、一部の光は境界で再び反射され、再度水滴の中を光が進む。この水滴内で再反射された光が再び境界にぶつかると、大半の光は屈折され水滴の外側に進むが、また一部の光は境界で再々反射される、、、という「屈折して水滴の外に進む光」と「反射して水滴内を進む光」が存在し、それが複数回繰り返されるのだ。

図3:水滴内を進む光

 

ここまで水滴の内部を進む光の光路について考えたが、まだまだ「虹」についての理解は道半ば。次回はこの光が各色に分かれる理由について紹介しよう。

この記事の監修者プロフィール

小林 仁美

大学院在学時に携わった分光観測、低温実験とデータ解析をきっかけに、 実験・データ解析のサポートビジネスを創案。エストリスタを立ち上げ業務に従事する傍ら、 購買から経理までバックオフィス関連業務を一手に担う。 光学に関する素朴な疑問や分光・天文学に関する記事を主に担当。

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