本シリーズでは様々なシーンで利用される干渉計について、その原理や応用例などを解説する。今回は線形光学干渉計の代表例の1つである「フィゾー干渉計」について紹介する。
本シリーズの記事はこちらから:
さまざまな干渉計:干渉計の分類
さまざまな干渉計:フィゾー干渉計(1)
今回の記事を読み進めるまえに、ぜひとも前回の記事を一読いただきたい
図1は検査面が平面の場合におけるフィゾー干渉計のレイアウトを示している。光源からの光は参照面と検査面で反射して元の光路を戻り、ビームスプリッタで折り曲げられ、観察面上に2ビーム間の光路差に対応した干渉縞を生成する。
図1:フィゾー干渉計のレイアウト(検査面が平面の場合)
参照面と検査面の反射率が大きく異なると干渉する2ビームが異なる強度を持つこととなるため、干渉縞のコントラストが落ち、縞の濃淡が薄くなって見えづらくなる。仮に参照面と検査面が共にノンコートのガラス等(反射率〜4%)程度であれば問題ないのだがが、例えば参照面がノンコートなのに対し、検査面がアルミ等の蒸着面(反射率〜90%)の場合には問題となる。余談ではあるが、Zygo社のDynaflectではこの対策として、コーティングによって参照面の反射率を高めている。本製品の検査面の対応反射率は「4~99%」を謳っており、様々な反射率の物体を測定することが可能となっている。
干渉縞のコントラストが測定に影響を与えることはわかったが、コントラストはどのように算出されるのだろう?図2の左図は、観察面上に生成されたフリンジの様子を表しており、右図はx軸方向のフリンジの強度変化を表したグラフである。強度が最も高い場所を\(I_{max}\)、最も低い場所を\(I_{min}\)とすると、コントラスト\(\mu\)は「振幅÷平均値」で求められるため、以下の式で表すことができる。
$$ \mu = \frac{\frac{I_{max} – I_{min}}{2}}{\frac{I_{max} + I_{min}}{2}} = \frac{I_{max} – I_{min}}{I_{max} + I_{min}} $$
図2左:観察面上に生成されたフリンジの様子、右:フリンジの強度変化
参照面と検査面からやってくる光の強度\(I_{ref}\)、\(I_{tes}\)は、誘電率\(\epsilon_{0}\)と電場\(E_{ref}\)、\(E_{tes}\)を用いて以下のように表される。
$$ I_{ref} = \frac{1}{2}\epsilon_{0}{E_{ref}}^2 $$
$$ I_{tes} = \frac{1}{2}\epsilon_{0}{E_{tes}}^2 $$
このとき、フリンジの強度\(I_{max}\)と\(I_{min}\)は、参照面と検査面の電場の重ね合わせから次の式で表せる。
$$ I_{max} = \frac{1}{2}\epsilon_{0}\left(E_{ref} + E_{tes}\right)^2 $$
$$ I_{min} = \frac{1}{2}\epsilon_{0}\left(E_{ref} – E_{tes}\right)^2 $$
これら一連の式より、コントラスト\(\mu\)は参照面と検査面からの光の強度\(I_{ref}\)と\(I_{tes}\)で表すことができる。
$$ \mu = \frac{2E_{ref}E_{tes}}{E_{ref}^2 + E_{tes}^2} = \frac{2\sqrt{I_{ref}I_{tes}}}{I_{ref} + I_{tes}} $$
少し長くなったので、今回はここまでとする。次回はフィゾー干渉計におけるコントラストについて見てみよう。
趣味は天文と写真と車。大学では天文サークルに所属し、暗い空を求めて日本中を飛び回っていた。 天文学を極めるために大学院に進学、在籍中は中間赤外線分光器の開発に従事。 カメラやレンズに関する記事を主に担当。