Aπραξία

光学測定器

結晶構造と対称性(6)

2026.9.17

結晶構造と対称性(6)

光学機器に利用されるレンズや窓材に用いられる各種光学材料が用いられるが、これらの材料は、原子配列に長距離の規則性がない非晶質(モルファスとも呼ばれる、ガラスなど)と、原子や分子が規則正しく周期的に配列した結晶に大別される。結晶における原子の配置構造を結晶構造と呼び、結晶構造の違いにより物性や光学特性に差が現れる。

前回の記事では常光線と異常光線について紹介した。今回はそれぞれの屈折率を式で整理する。

 

常光線は偏光方向が光学軸に垂直なので、電場は常に光学軸に垂直な面内にある。この方向の比誘電率は\(\varepsilon_\perp\)で一定である。屈折率と比誘電率の関係\(n = \sqrt{\varepsilon_r}\)を適用すると

$$n_o = \sqrt{\varepsilon_\perp}$$

となる。常光線の屈折率は光の進行方向に依存しない。

 

一方、異常光線の屈折率は光の進行方向によって変化する。結晶構造と対称性(4)で紹介した屈折率楕円体を使用して異常光線の屈折率を考える。光学軸をz軸とすると、一軸性結晶の屈折率楕円体は以下の式で表される。

$$\frac{x^2}{n_o^2} + \frac{y^2}{n_o^2} + \frac{z^2}{n_e^2} = 1$$

光の進行方向に垂直な面でこの楕円体を切ると切り口は楕円になる。異常光線の屈折率はこの楕円のうち、光学軸を含む面内での半径に対応する。光の進行方向が光学軸となす角を\(\theta\)とすると、この半径\(r\)は:

$$\frac{1}{r^2} = \frac{\cos^2\theta}{n_o^2} + \frac{\sin^2\theta}{n_e^2}$$

屈折率楕円体は、原点からある方向に伸ばした直線が楕円体表面と交わる点までの距離が、その方向に偏光した光の屈折率になるように定義されている。光がxz平面内を、z軸(光学軸)から角度\(\theta\)の方向に進むとする。異常光線の偏光方向は、光の進行方向と光学軸を含む面内(xz平面内)にあり、かつ進行方向に垂直である。この方向の単位ベクトルは\((\cos\theta, 0, -\sin\theta)\)と書ける。原点からこの方向に距離\(r\)だけ進んだ点\((r\cos\theta, 0, -r\sin\theta)\)が楕円体上にあるとき:

$$\frac{(r\cos\theta)^2}{n_o^2} + \frac{(-r\sin\theta)^2}{n_e^2} = 1$$

これを\(r\)について解くと、異常光線の屈折率が得られる:

$$n_e(\theta) = \frac{n_o n_e}{\sqrt{n_e^2 \cos^2\theta + n_o^2 \sin^2\theta}}$$

この式から、光学軸に平行に進む場合(\(\theta = 0\))では\(n_e(0) = n_o\)となり、常光線と一致する。これが光学軸方向で複屈折が起こらない理由である。光学軸に垂直に進む場合(\(\theta = 90°\))では\(n_e(90°) = n_e\)となり、複屈折が最大になる。

 

なお、このことからわかるように複屈折を発生させないようにする(どんな偏光状態の光でもスネルの法則に従って進ませるようにする)には、異常光線を光学軸方向に進ませればよいことを意味する。窓材として使う場合は素子に対して垂直入射させることが多いが、そのような場合光学軸が窓面に垂直になるように結晶を切り出せば入射光が光学軸方向に沿って進み、複屈折が起こらない。例えば一軸性結晶では光学軸はc軸方向なので、c軸に垂直な面で切り出せばよい。このような切り出し方をc軸カットと呼ぶ。偏光状態を維持したい光学系や、複屈折による像のぼけを避けたい用途では、c軸カットが選ばれる。ただし、光が窓面に対して斜めに入射する場合は\(\theta \neq 0\)となり、複屈折の影響を受ける点に注意が必要である。

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