
本日もまたスネルの法則の話である。スネルの法則において屈折率が複素屈折率(\(N=n+ik\))のとき、つまり吸収がある媒質に光が入射した場合の屈折光線の振る舞いについて考えてみたい。いきなり数式をゴリゴリ弄ってもよいが、それでは物理的な理解の助けにならないので、今回は定性的にどうなるのかを予想し、次回に定量的に(理論的に)確認するという手順を踏んでみたい。
図1は吸収のある媒質(\(N=n+ik\))に平面波が入射した場合の模式図である。入射側の媒質は空気(または真空)であり、入射角度は\(\theta_1\)である。媒質に吸収がない場合(\(k=0\)の場合)は、媒質内での光波の速度は\(v=c/n\) (\(< c\))となるため屈折角度\(\theta_2\) (\(<\theta_1\))の方向に伝播する。伝播方向は点Oを中心とした半径\(AB/n\)の円を描き、点Bから接線を引くという手順の作図によって得ることができる。演習等で一度はやったことがある方が多いのではないだろうか?

図1:吸収のある媒質に平面波が入射した場合の模式図
さて、ここで吸収がある場合(\(k\neq0\))を考える。図1において媒質中の波面(同位相面)はBCであるが、吸収があると波面内の点Bと点Cではその振幅(強度)が異なる。点Cに到達した波面は界面から距離\(AB/n\)だけ余分に媒質内を伝播しているため、吸収によってエネルギーが失われた結果として、点Bよりも振幅が小さくなっている。つまり、点Bから点Cに向かって次第に振幅が小さくなるのである。空間的に振幅依存性を持つ平面波は回折によってより振幅が小さい側にその進行方向を変える。ナイフエッジによって平面波が切られた場合にナイフエッジを回り込むように波面が回折するが、この現象は見方を変えれば振幅がゼロの方向(より弱い方向)に回り込んだとも言える。このことを思い起こせば振幅が小さい方向に波面が方向を変えるだろうことが自然に理解できるであろう。
波面が曲がる方向はより法線に近い方向、つまり\(\theta_2\)がより小さくなる方向である。定性的な考察からは屈折角度は吸収がない場合に比較してより小さくなる(偏角 = \(\theta_1-\theta_2\)はより大きくなる)ことが予想される。
次回は光学理論と数学を駆使して屈折角を定量的に得てみよう。
大学院在学中に自らが計画して手掛けた偏光分光装置の開発がきっかけで光学に魅了される。 卒業後民間光学会社に就職し、2006年にフォトコーディングを独立開業。 官民問わずに高品質の光学サービスを提供し続ける傍ら、2009年より京都産業大学にも籍を置き、 天文学と光学技術を次世代に担う学生に日々教えている。 光学技術者がぶつかるであろう疑問に対するアンサー記事を主に担当。