
天体写真を処理するうえで必要な処理の1つであるフラット補正処理について、今回は主に処理手順について説明しよう。
天体望遠鏡やカメラレンズで写真を撮ると、その写野全体で明るさが一定にならないことがある。この要因は以下のとおり複数存在する。
天体望遠鏡やカメラレンズには「周辺減光」という現象があり、具体的には写真の周辺部が中心部に比べて暗くなることがある。図1の左図は天体望遠鏡で撮影した画像を周辺減光の様子が分かりやすいよう、極端に明るさを調整した画像である。写野の四隅周辺部が暗く落ち込んでいるのが分かる。
カメラボディ内でケラレが発生し、その部分が暗くなってしまうことがある。
カメラ内部のCCD/CMOSセンサーにゴミが付いている場合、ゴミの部分が暗く写ってしまう。
CCD/CMOSを構成する各ピクセルには感度(量子効率)のムラがあり、場所によって明るく写る部分と暗く写る部分が出来てしまう。
これらの要因が影響して、天体写真ではその写野内で明るさが一定にならないのが一般的である。ただ、望遠鏡やカメラ等の機材側の工夫でこれらの要因を完全に取り除くのは困難なため。画像処理によって写野内の明るさを均一にするのだ。これが「フラット補正」である。

図1:天体望遠鏡で撮影したM20。左図は周辺減光の様子が分かりやすいように極端に明るさ調整したものであり、四隅周辺部が暗く落ち込んでいる様子が見られているが、フラット補正を行うとそれらが解消されていることがわかる(右図)
フラット補正処理は以下の手順に沿って行う。
1. マスターフラットの作成
1-1. ライトフレームと同じ撮影システム(望遠鏡・フィルター・カメラ等)で、明るさが一様の被写体(雲、空、拡散板を使用した光源など。筆者がよく使うのは空、その他EL発光板や白を表示させた液晶ディスプレイを使う方もおられる)を沢山撮影する。これをフラットフレームと呼ぶ。なおフラットフレームは厳密には無限遠にある一様光源を撮影しなければいけないのだが、現実的でない場合はEL板等で代用されている。
1-2. フラットフレームを撮影したのと同じ条件(カメラ設定・露出時間・気温)でフラットフレーム用のダークフレームを沢山撮影する。これをダークフラットフレームと呼ぶ。
1-3. 各ダークフラットフレームから、事前に作成したマスターバイアスを減算(引き算)する。
1-4. 手順1-3で作った各画像をメジアンもしくは加算平均でコンポジットし、マスターダークフラットを作る。
1-5. 各フラットフレームからマスターバイアスとマスターダークフラットを減算(引き算)する。
1-6. 手順1-5で作った画像をメジアンもしくは加算平均でコンポジットし、マスターフラットを作る。
2. フラット処理
バイアス減算、ダーク減算後の各ライトフレームをマスターフラットで除算(割り算)する。

図2:画像処理の流れ。フラット処理の一連の手順は上図の赤で囲んだ部分に相当する。
大学院在学中は素粒子物理学を専攻。趣味の天体写真も物理理論に裏付けられた解析方法を行っており、 アマチュア天文家の間で蔓延している都市伝説は一切信じない。赤道儀マニアでアマチュア天文機器にやたら詳しい。 計算機ホログラム(CGH)や干渉計などの高度な物理計算を軽々とこなす。 光学・物理学に関連する原理や数学的理解に関する記事を担当。
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